切削加工の仕事に携わる人は金属材料の表などを見ていて「縦弾性係数 E」という表示を目にした事はないでしょうか?
この「縦弾性係数」って何だろう?・・・という事で今回は「ヤング率とフックの法則」についてのお話です。
金属材料というのは、程度の差こそありますが、力が加わる事で徐々に変形していき最後には変形したまま元の形状に戻らなくなったり、破断したりしてしまいます。
この時の荷重とその荷重を受ける材料の面積との関係を表したものが「応力」になります。
今から数百年ほど前にこの物体にくわえた力と物体に生じた変形量との関係を明らかにしようとした人達がいました。
その人達の名前が「フック氏」と「ヤング氏」でこの方達の考えを式にまとめたのが「フックの法則」になります!
フックの法則とは「バネの伸びと重りの重さの関係が比例関係にある」事を発見した事がことの始まりで、このときの材料の断面積や長さに関わらず、外力と材料の関係を表したのが「ひずみ」と「応力」になります。
少し整理します。
・バネの伸びに対応するのが「ひずみ」
・重りの重さに対応するのが「応力」
この上記の関係に材料固有の比例定数を加えたのが「フックの法則」になります。
この比例定数の事を「縦弾性係数」と呼び(記号は E )この考えをまとめたのがヤング氏なので「ヤング率」とも呼ばれているそうです!
初めて「ヤング率」と聞いた時は「鉄を削る事でどのくらい若く見える様になるのか・・・?」などの比率なのかと少し思ってしまったのですが・・・
まったく関係ないんですね!(←当たり前です)
・・・。
すみません話を続けます。
この「ヤング率」はもちろん弾性域での話になります。
(塑性変形:元に戻らない変形の事)
(弾性変形:ゴムの様にある一定の変形をしても外力が無くなると元の形状に戻る変形の事)
フックの法則の式は以下の様に表されます。
σ【MPa,N/㎟】=E【MPa,N/㎟】×ε
この上記の式からは次の事が言えます。
「形状の等しい2種類の材料に同じ外力(応力)を加えた場合、縦弾性係数の大きな材料の方が、変形量(ひずみ)が小さい」
つまりこの「縦弾性係数」が大きければ変形量が小さくて済むという事です。
実際アルミ合金と鉄鋼材を比べるとその値は鉄の方が3倍大きいため、変形に対しては鉄の方が強い事になります。
また材料にせん断応力が作用したときは上記と同様の考え方により
せん断応力=横弾性係数×せん断ひずみ
となり、記号で表すと以下になります。(弾性域での話です)
τ【MPa,N/㎟】=G【Mpa,N/㎟】×γ
記号になると解りにくいですが上記の様に考えると次の様な事がいえます。
「形状の等しい2種類の材料に同じせん断力(せん断応力)を加えた場合、横弾性係数の大きな材料の方が、変形量が小さい」
この横弾性係数(記号は G )も縦弾性係数と同じく鉄とアルミでは鉄の方が3倍大きいので鉄の方が変形に対しては強い事になります。
私はこの仕事を始めるまで「鉄」と聞くと「硬い」というイメージのみであまり「変形」するというイメージが無かったのですが、この様に「外力による変形」や「熱による変形」など、金属材料というのはホント奥が深いですね!
そんな訳で、「引張り強さ」と併せて知っておくと便利な材料力学のお話でした!