今回は「残留応力」について簡単にお話させて頂きます。
鋳物を鋳造する際、冷えて固まるにあたって細い部分や薄い部分は早く冷えます。
早く冷えるという事は、早く結晶するという事になります。
また、同じ場所でも外側から冷えていきますので、内側と外側には温度差があります。
あとから固まる内側は冷えて縮もうとしていますが、外側はすでに固まっていますので引っ張られる事になります。
上記の様な事が鋳物の内部に複数個所あり、固まった鋳物の外側には縮もうとする力が働き、内側には引っ張ろうとする力が残る事になります。
焼入れや溶接をする際にも同じ現象がおこります。
このように鋳造、焼入れ、溶接などの加工や熱処理をした後に、外力がかかっていない状態にもかかわらず、内部に力のかかった状態を「残留応力」(内部応力)と言います。
加工を行う際に、鋳造品のすみ肉部分を切削するとその先の部分が開く方向へ変形する事があります。
これは残留応力が切削前の状態でつり合っていたのに、一方を削り取られた事により、そのバランスが崩れておこります。
切削加工後すぐに計測した時には寸法がでていたのに、暫くしてから計測し直すと寸法が変化する(公差から外れ、NG品になる場合もあります)のはこの為です。(←本当に困ります)
このような事があるために鋳造品には昔から「枯らし」という事が行われています。
枯らしとは、常温で放置する事により内部の原子が動いてつり合いの取れた状態にする事です。
この「枯らし」を人工的に行う事を「応力除去」といい、このための熱処理を「焼きなまし」といいます。
鋳物などを加工する際、寸法や精度を出したい時にはこの点を注意しましょう!