加工硬化について簡単にお話させて頂きます。
金属を冷間加工(圧延・引抜き・鍛造など)すると、かたさや引っ張り強さが増し、材料が伸びなくなりもろくなります。一般的にかたくなるこの様な状態を「加工硬化」と呼びます。
これは、加工により変形が進むことで結晶内に歪みが起こってそのひずみが抵抗となり変形しにくくなる事が原因で起こります。
この加工硬化は金属材料、特にステンレスやアルミニウムといった焼入れのできない板材に利用され、材料の「強さ」を上げています。
またピアノ線をはじめとした色々な線材もこの加工硬化により引っ張り強さを大きくしています。
細い線材ほど冷間加工変形の影響を強く受け、引張り強さ も強くなっています。
熟練の加工屋さんは経験からご存知かもしれませんが、これらの加工硬化は切削加工時にも起こります。
例えば、少し切れ味の悪くなった工具などで送り速度を小さくすると刃先が被削材をこする様に押し付ける状態になり被削材の表面だけが加工硬化を起こしそれ以上削る事が難しくなります。
この現象は特にステンレスに起こりやすいので加工する際には注意が必要になります。
ステンレスを削る際、加工硬化を起こさないようにする為には、送り速度を大きくし、切り込みを少し深めにする事がポイントになります。
切削加工初心者の方などは注意しましょう!